*鶏と卵の話*


ここでは、理論的な話題でよく出てくる「鶏と卵の話」という言葉についての独断的な考察を紹介します。
以下、2人の会話をご覧ください。


後輩 せんぱ~い (^ー^)
先輩 あ、2~3分待って。
客先にメール送っちゃうから。
後輩 あ、はい。
じゃ、横で待ってます。
先輩 悪いね。
後輩 。。。
先輩 。。。
後輩 せんぱい?
先輩 ん?
後輩 鼻毛が出てますね。
先輩 ぶっ!?
マジで?
後輩 はい、大マジです。
取りましょうか?
先輩 い、いや、いいよ。
なんか、セクハラっぽいし。。
後輩 そうですか。
先輩 あとで、トイレで取ってくるよ。
もうすぐ終わるから。
後輩 。。。
先輩 。。。
後輩 せんぱい?
先輩 ん?
今度は耳毛か?
後輩 いや、よく見ると両方の穴から鼻毛が出てますね。
先輩 ぶっ!?
ま、マジで?
後輩 はい、大マジです。
取りましょうか?
先輩 取りましょうか、って、、、
どうやって?
後輩 女の子は常に毛抜きを持ってますから。
先輩 じゃ、あとで貸してくれ。
ちゃんと、せっけんで洗って返すから。
後輩 あ、じゃあコレ。
どうぞ。
先輩 これで送信、っと。
じゃ、トイレ行って来るよ。
後輩 あ、はい。
先輩 。。。
後輩 。。。
先輩 おまたせ。
どうっスか?
後輩 あ、だいじょぶですね!
きれいに取れてます。
先輩 ほっ。
今日は寝坊気味であんまり鏡を見なかったので、教えてくれて助かったよ。
後輩 言っていいものか迷ったんですけど、、、
教えないほうが罪だと思えるくらいに出ていたので。
先輩 そうだね。
後輩 しかも、両方。
先輩 そ、そうだね。
こういう時って、教えていいものかどうか迷うよね。
後輩 他にもファスナーが開いてる時とか、下着がハミ出してる時とか。
クリーニングのタグ外し忘れとか、食後に青ノリが付いているとか、あんまり羞恥心が大きくない場合は気にならないですけど。
先輩 傾向としては、やっぱり普段はエチケットとして隠すべき場所に関係する部分が微妙なのかな?
例えばカツラのズレに気付いたら、どうするのが正解なんだろ?
後輩 確かにカツラはモロに隠すべき部分ですけど、、、
本人はバレてない方向で通したいでしょうから、教えた時点でアウトなんじゃ、、、?
先輩 そうなんだよね~。
そういう意味だと、気付いてもらうために小芝居するのも厳しいな。
後輩 そもそも、カツラはテーマとして重過ぎますよ。
たぶん正解はなくて、何らかのアクションを取った後のフォロー次第で正解だったかどうかが決まると思いますよ?
先輩 おぉ、なかなか深い意見だね。
でも、それが正しいかもしれないな。
後輩 身近にヅラ仲間がいれば、その人から言ってもらえば大丈夫かも。
先輩 う~ん、ヅラを自ら公言している人なんていないだろうから、それも無理なのでは?
さっきの話と同じで、頼んだ時点でアウトだと思うよ。
後輩 そっか、矛先がズレただけで、結局は一緒ですね。
こういうの、なんていうんでしたっけ?
先輩 ん?
なんかあったっけ?
後輩 なんか、ループしてる感じの、、、
ほら、トリがどうとかって、、、
先輩 なんだ、その羽ばたくような動きは?
もしかして、「鶏と卵の話」のことか?
後輩 あ、そうそう!
せんぱいの話に、よく出てきますよね。
先輩 そう?
でも、確かにセキュリティの話をしていると理論的にループする場合があるから、当てはまるパターンは多いかもね。
後輩 何か深い謂れがある言葉なんですか?
先輩 ちゃんと、深~い意味があるよ。
そういえば、前に「改竄」って言う言葉に深みがなくてガッカリしてたことがあったね。
後輩 そうなんですよ。
深い由来、聞きた~い!
先輩 かなり昔の話だけど。
「プラトン」と「アリストテレス」って知ってる?
後輩 あ、知ってます!
それって、「人間は考える葦である」の人でしたっけ?
先輩 それはパスカル。
後輩 あ、アレッ?
じゃあ、「無知の知」の人かな?
先輩 それはソクラテス。
後輩 す、すみません。
先に進んでください、、、
先輩 いや、でもソクラテスは惜しかったね。
二人とも、紀元後初期の有名な哲学者だよ。
後輩 哲学者ですか、、、
なんか有名な格言を残したんですか?
先輩 まぁ、格言も残したんだろうけど、、
「イデア論」が有名だよ。
後輩 「イデア」って、なんですか?
先輩 簡単に言うと、現実世界にあるモノの「原型」のことだよ。
後輩
簡単というか、抽象的すぎて何だかサッパリ。。。
先輩 まぁ、そりゃそうか。
個々のモノにはそれぞれ原型があって、それが投影されたモノが現実世界に存在している、と考えるんだよ。
後輩 う~ん、、、
モノの「定義」みたいなことですか?
先輩 いや、ちょっと違うかな。
後輩 表裏一体?
先輩 少し近づいたけど、依存関係が双方向じゃないのでやっぱり違うかな。
光源に物体を照らして、それによって影が出来るのと似た感じ。
後輩
照らした物体がイデアで、その影が現実世界のモノ?
先輩 うん、そう。
だからどうした、って言いたいところだけど、哲学ってそういうものだから。
後輩 ふ~ん、、、
その理論を二人で考えたんですか?
先輩 いや、イデア論を考えたのはプラトンで、弟子のアリストテレスは逆の思想を持っていたんだよ。
後輩 弟子なのに逆の思想ですか。
師匠に歯向かうとは、いい度胸ですね。
先輩 まぁ、議論を闘わせるのも彼らの本分だから、反対意見があってもいいんだよ。
アリストテレスは、現実世界にあるモノは元々そこに存在していたわけで、原型は人間が後から考えて作ったものだ、と考えたんだよ。
後輩 あ、こっちは「定義」に近くないですか?
先輩 そういう解釈も出来なくはないけど、定義というと「決め事」になっちゃうからね。
決め事だけがあっても、モノは生まれないし存在できない。
後輩 ふぅん、、、
どっちにしても、理屈が対立しているのは間違いないですね。
先輩 つまり、原型があるから現実世界にモノが存在すると考えたプラトンと、原型は現実世界のモノから生まれたものだと考えるアリストテレスの両者が拮抗しているわけ。
後輩 うーん、何となく主張は分かったんですけど、、、
結局、どっちが正しいんですか?
先輩 これ、どっちも具体的に証明できないんだよね。。。
まだ「原子」という考え方がなかったから、モノがどうして存在するのか立証するために、色々と理屈をめぐらせていたんだよ。
後輩 えっ?
物質が原子の集まりだって知らなかったんですか?
先輩 そりゃそうだよ、紀元前後の話だもの。
だって、原子の存在が明らかになったのは最近のことだし。
後輩 えっ、そうなんですか?
先輩 まぁ、最近といったって何百年も前だけどね。
後輩 そっか、、、
だから、自然と「何かのモトから出来たんじゃないか?」という考えに向かっちゃったわけですね!
先輩 そう、向かっちゃった。
もちろん彼らに聞いたわけじゃないけど、その推理に賛成。
後輩 そうなると、元々の考え方に問題があったっていうことになりますね。
先輩 プラトンの考えに対しては「イデアはどこから出てきたの?」という疑問が残る。
一方で、アリストテレスに対しては「モトになるものがないのにどうしてモノが存在できるのか?」という疑問に立ち返る。
後輩 なんか、どっちもどっちって感じですね。。。
あ、コレって「鶏と卵の話」そのものじゃないですか!?
先輩 うん。
このような状態を連想させる日常的なものとして、鶏と卵の関係が引用されるようになったんだよ。
後輩 なるほど~、確かに今回は深い話ですね!
でも、、、
先輩 ん?
後輩 卵を産む動物を例にするのはヨシとして、なんでニワトリなんでしょうか?
先輩 えっ?
後輩 身近なトリだったら、スズメとかハトでもよかったんじゃ、、、?
先輩 いや、それは甘いぞ、お若いの。
じゃ、スズメやハトの卵を見たことがある?
後輩 あぁ~、そういえば、、、
確かに成鳥しか見たことないですね。
先輩 それに、ハトはともかくとして、スズメって世界的に認知されているトリなのかどうか、、、
朝の軒下でスズメが鳴いているイメージって、限られた地域の人だけしか持ってないんじゃないかな。
後輩 そっか。
日本の話じゃないんでしたね。
先輩 紀元前に今と同じニワトリがいたかどうか知らないけど、いまや世界中の広い範囲で飼育されてるっていうことなんじゃない?
後輩 そっか。
全天候型で、どこでも飼えるんでしょうね。
先輩 そだね。
しかも飛ばないし、全身おいしくいただけるし。
後輩 そういえば、ニュートンもリンゴで万有引力を思いついたことですし、身近にあるってことが大事なんですね!
先輩 身近に起きていることを疑問に思い、それを探求しようと努力することが大事なんだよ。
彼らにしても、きっかけは何でもよかったんじゃないかな。
後輩 そっか、、、
他の人の前でリンゴが落ちたとしても、万有引力は思いつかなかったでしょうね。
先輩 当たり前のことに疑問を持つのも才能、ってことだね。
少し脱線しちゃったけど、鶏と卵の話は理解してもらえた?
後輩 はい、理論的にループしているような状態に使えばよさそうですね。
先輩 まぁ、そうだね。
一般的には、単純に「あちらを立てればこちらが立たず」と似たようなイメージで使われているみたいだけど。
後輩
それって、どんな場合ですか?
先輩 例えば、利用者が増えないとコストが減らないけどコストが減らないと利用者が増えない、みたいな場合かな。
後輩 ん?
なんか、よさそうですけど、、、
先輩 実現させるかどうかは別にして、宣伝して客寄せしたり、初期投資を増やして客単価を減らせば解決できるじゃない?
つまり理論的にループしてるわけじゃなくて、解決策に踏み切れないっていうだけのことなんだよ。
後輩 あぁ~、、、
他にも、サービスに付加価値をつける、っていう解決策もありそうですね。
先輩 まぁ、前提条件として制約事項がある中での理論的なループ、っていう解釈でいいんじゃないかな?
後輩 なるへそ~。
さっそく、今日から使ってみます。
先輩 言葉の由来については満足してもらえた?
後輩 はい、大満足ですよ~。
大変、興味深い話でした。
先輩 そか。
満足していただけたところで、IPsecの話に戻ろうか?
後輩 はい!

以下、「人間プロトコル」につづく。。。

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